研究情報
昭和電工と日本製鉄、6国立大学と連携し、工場排出ガス中低濃度CO2の分離回収技術開発を本格始動(2022.12)
昭和電工㈱と日本製鉄㈱、および6つの国立大学(大分大学、大阪大学、京都大学、千葉大学、名古屋大学、北海道大学)が共同して進める事業が、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業」に採択され、10月より技術開発を本格始動した。両社および大学が持つ技術を使って、低圧・低濃度(大気圧・CO2濃度10%以下)の排出ガスから効率的にCO2を分離・回収するもので、1トンあたり2,000円台という画期的な低コスト実現をターゲットに、2030年代後半の社会実装を目標とする。昭和電工は、回収したCO2を化学品の原料として再利用し販売するまでのビジネスモデルの構築を目指す。本事業の研究開発期間は2022年度から2030年度までの9年間で、事業総額約84億円を予定している。
石油化学コンビナート、製鉄所等の工場から排出される低圧・低濃度(大気圧・CO2濃度10%以下)の排出ガスは、石炭火力発電等で排出される高圧でCO2濃度が高いガスに比べて、①CO2を選択的に分離することが難しい、②分離するのに多量のエネルギーを消費してしまう、といった課題があり、CO2分離回収技術の社会実装は大きくは進んでいない状況だ。
今回の研究開発では、既存の多孔体材料(ゼオライト、活性炭等)とは全く異なる「構造柔軟型PCP」を低圧・低濃度CO2排出ガスからのCO2分離回収に適用し、上記の課題を抜本的に解決することを狙う新たなチャレンジだ。ゼオライトは、剛直なナノレベルの細孔にガス分子が取り込まれるのに対し、構造柔軟型PCPは、材料の構造が柔軟に変化してCO2分子を取り込み、複合体(包接体)を形成する。複合体を安定して作りうるCO2分子のみが取り込まれるため、CO2の高い選択性が期待されている。
既存CO2分離剤(ゼオライト)と新規分離剤(構造柔軟型PCP)のCO2分離メカニズム
この新しい材料を利用した革新的なCO2分離技術の社会実装のために、両社は、それぞれが独自に開発してきた分離剤の技術を融合させ、低コストかつ分離時のエネルギー消費量を抑え、排出ガスから低濃度CO2を効率的に分離する革新的な分離剤の開発とその社会実装に取り組む。さらに6国立大学との連携による共創を通じて、早期の実現を目指す。
詳しくは、→https://www.sdk.co.jp/news/2022/43636.html