トピックス,マテリアル他編

ちとせG、微細藻類を用いた100%バイオPET樹脂開発に世界初の成功。大阪・関西万博、日本政府館にて展示(2025.6)

 バイオエコノミーを推進する産業横断型プロジェクト「MATSURI」を運営するちとせグループ(シンガポール)は、微細藻類由来の炭化水素を主原料の一つに用いた、100%バイオ由来原料によるPET樹脂(藻類由来PET樹脂)の開発に世界で初めて成功したと発表した。これにより、化石資源に依存しない持続可能な方法でPET樹脂を生産する道がまた一つ開かれた。

 微細藻類を大規模に培養し、そこからPET樹脂を生産する取り組みは、世界にも前例のない画期的な挑戦である。完成した藻類由来PET樹脂は、2025年大阪・関西万博の日本政府館ファクトリーエリア「『藻』のもの by MATSURI」にて展示公開されている。

ペットボトル成形前段のプリフォームと藻類由来PET樹脂ペレット

●PET樹脂バイオ化の課題を克服する、MATSURIの革新的技術
 ペットボトルの原料であるPET樹脂は、「エチレングリコール」と「テレフタル酸」を重合して製造される。このうちエチレングリコールについてはバイオ化が実現されているが、テレフタル酸の粗原料であるパラキシレンは、生物が体内で直接合成しにくい性質を持つため、生物由来の資源から直接製造する事は現在でも非常に困難である。そのため、生物が生産可能な化合物を出発点として、そこから化学変換を経てバイオパラキシレンを生成する方法が試みられてきた。現在主流となっている、植物由来の糖から作られるアルコールを出発点とする方法は、可食原料を用いる点や化学変換工程の多さが課題とされている。

 この度、ちとせグループは、CO2と太陽光のみで生産した微細藻類から得られる炭化水素「ボツリオコッセン」を原料に、より少ない化学変換工程でバイオパラキシレンを得る技術を確立した。この技術では、ボツリオコッセンを特殊な触媒で熱分解することで、効率的にバイオパラキシレンを得る。さらに、PET樹脂を作るために十分な量のバイオパラキシレンを確保するには、原料となる炭化水素を生産する微細藻類のバイオマスが大量に必要だが、ちとせグループは長年磨き上げてきた屋外大量培養技術によって、これを実現している。微細藻類の炭化水素からバイオパラキシレンを得る技術、そしてその原料となる炭化水素を生産する微細藻類の屋外大量培養技術。この両者が揃ったことで、今回の成果に繋がった。

●使えば使うほどCO2が減るPET樹脂へ
 今回の技術革新により、持続可能な方法で化石資源に頼らず、PET樹脂製品を供給する道がまた一つ開かれた。無尽蔵に降り注ぐ太陽光と微細藻類の光合成の力を活用し、資源枯渇の不安から解放されうるこの取り組みは、未来の世代が安心して豊かに暮らせる社会を築くための重要な一歩である。今回完成した藻類由来PET樹脂は、まずはペットボトルとして成形されるが、将来的には化粧品容器や衣料品など、あらゆる分野への応用を目指す。ちとせグループは、微細藻類の生産技術をさらに改良し「使えば使うほどCO2が減るPET樹脂」の実現を目指して、持続可能な社会の構築に貢献する考えだ。

詳しくは、→https://chitose-bio.com/jp/news/9182/

2025-06-05 | Posted in トピックス, マテリアル他編 |