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エコプロ2019 福助工業の海洋生分解性レジ袋、東洋紡のバイオマス樹脂利用のナイロンフィルム 注目集める(2019.12.23)
エコプロ2019(主催:産業環境協会、日本経済新聞社)は、12月5日~7日、東京ビッグサイトにおいて開催された。併催展として地球温暖化に伴う気候変動や災害がテーマの「環境・再エネ・レジリエンス展 気候変動・災害対策Biz 2019」(主催:日本経済新聞社、日経BP)が12月4日~6日、初めて開催された。
COP25のマドリードでの開催、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けた取り組み、また環境省の中央環境審議会の専門委員会ではレジ袋有料化義務化、例外対応に向けた議論も進む中、関係の展示は注目を集めた。
海洋でも、土壌でも生分解するレジ袋、また合わせてバイオマスプラレジ袋を展示した。土壌・海洋生分解性フィルムについては、原料はトウモロコシなどの植物。研究機関で生分解性が確認され、現在、TUVオーストリア認証取得申請中。同認証の基準は30℃の海水で6ヶ月以内に90%以上生分解が条件。海洋生分解単体のフィルムとしては現時点では同認証を受けているものはない。2020年7月から数量を限定した販売開始を目指しているが、世界的な生分解性ポリマーの需給が逼迫しており、量産化は、原料事情を見ながら順次拡大していく予定。使用領域拡大を目指し、並行して軟包装のシーラント開発を目指す。
海洋生分解性レーヨン繊維「e:CORONA(エコロナ)」、また同繊維を使った海洋・土中生分解性スパンレース不織布を展示した。ベルギーの測定機関 OWS(Organic Waste Systems) において、同繊維の海洋性分解性について、28 日間にわたり海水中での生分解性試験の結果、土中に加え、90%以上の高い生分解性を確認した。レーヨンは紙と同じ木材パルプが原料となってできた化学繊維の中の再生繊維で、シルクに似た光沢・手触りが特徴だ。?また、重金属分析試験や、食品接触物質分析試験をクリアした。「エコロナは、他の海洋分解性の素材に比べ、海水にはいり早い段階で生分解が始まっていく素材です。マイクロプラスチックは洗濯の排水から流れ出る衣類の毛落ちが大きな原因のひとつと言われており、海洋で使う漁具製品というよりも、衣類の市場が有望と考えています」(ダイワボウレーヨン機能原料部担当)
帝人(東京都千代田区)
微細な繊維片のマイクロプラスチックが発生しにくい、マイクロプラスチック対策素材「デルタ フリーモ」や「オクタCPCP」など、非起毛の保温素材を展示した。洗濯の排水から流出するマイクロプラスチックファイバーは、起毛を施したフリース素材等の毛落ちによるものが多いと考えられている。デルタフリーモは新しい質感のスウェット素材。特殊4層編地構造により、肉厚でありながら軽量嵩高性とソフトな風合いを備える。オクタCPCPは、中綿と裏地を一体化させた快適機能素材。生地の裏面を覆うパイルが高異型特殊断面ポリエステル繊維オクタで構成されており、起毛を施したような膨らみをもつ。
海洋プラスチック廃棄物を用いたシューズ・アパレル「PARLEY」を展示した。アディダスは、海洋保護団体NGOのパーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ(PARLEY FOT THE OCEANS)と2015年からパートナーシップを締結。海から回収したプラスチック廃棄物を使って新素材を開発し、2016年から本格的に取り組んでいる。同社のものづくりはリサイクルではなく、アップサイクルと呼ぶ。単なる素材の原料化や再利用ではなく、元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すことを最終的な目的とする。また、国内直営店の15店舗などにコレクターズ・ボックスと名付けられた箱を設置し、ブランドは問わず使用済みのアパレルやシューズ、バッグなどを回収、分別後、製品化している。ブースでは、アディダス製品に限らず、家庭で使わなくなった衣類やシューズの回収ボックスも設置された。
海洋プラスチックごみ対策コーナー
官民で海洋プラごみ問題の解決に取り組む団体「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」、プラスチックを削減するため産官学民が幅広く参加する「プラスチック・スマート」と連携し、素材や製品開発に取り組む企業の紹介やプラスチックの3Rやごみ拾い活動に積極的な企業・団体も紹介された。
GSIクレオス(東京都千代田区)は、凸版印刷と開発した生分解性プラスチックを用いたレジ袋を展示した。GSIクレオスが供給する生分解性樹脂Mater-Bi(マタビー)を原料として、凸版印刷が、製品化、石油由来のレジ袋に替わる、コンビニなどでの普及を狙う。Mater-Biは、植物由来ポリマーやトウモロコシデンプンが原料で、使い捨てプラスチックの規制が進んでいる欧州では、高い使用実績のある生分解性プラスチック。海洋分解性を有することも判明しているという。
ユポ・コーポレーション(東京都千代田区)は原料に木材を使わず、製造工程で水もほとんど使わない従来の化学合成紙の特徴に加え、一部をバイオマス原料に代替したユポグリーンを展示した。ユポの主原料はポリプロピレンと無機充填材、そのためプラスチックフィルム同様の耐水性・耐久性を持ちながら、紙のようなしなやかさ、印刷・筆記適性をもつのが特徴。また、生分解性バイオマス樹脂バイオPBSをベースとした生分解性容器成形シート、印刷用紙の開発についても発表した。
BiologiQ Japan(東京都杉並区)は、BiologiQ社(米国アイダホ州)の日本法人。同社が開発した生分解性バイオマス樹脂“NuPlastiQ”のコンパウンド加工製品などを展示した。同製品はコンパウンド事業を得意とする販売代理店の稲畑産業と共同で開発した。NuPlastiQは、ジャガイモ加工工場の廃棄物から取り出したデンプンとグリセリンが主原料の熱可塑性樹脂。
「NuPlastiQは、PE、PPなどの汎用樹脂とコンパウンドすることで強度アップ、バイオマス度アップなどが可能です。海洋生分解性ついても検証を進めており、他の生分解性素材の分解速度を速められることがわかってきています」(BiologiQ Japan事業担当)
原料の一部にバイオマス由来のナイロン樹脂を使用した包装用の「バイオプラーナ 二軸延伸ナイロンフィルム(ONY)」を開発、展示した。サンプル出荷を開始しており、2019 年度中の量産開始を目指す。二軸延伸ナイロンフィルムは、優れた耐ピンホール性や耐衝撃性が特徴で、液体包装、詰め替えパウチ、レトルト包材などさまざまな用途で使用されている。石油由来原料のみを使用したナイロンフィルムと同等の性能を実現した。バイオマス由来のナイロン樹脂を使用した包装用フィルムの製品化は業界初。
PEFフィルムについては、開発中と展示された。PEF(ポリエチレンフラノエート)は、PETに比べ酸素透過性は10分の1、水蒸気は2分の1と内容物の製品寿命を延ばすバリア性が高く、100%植物由来の次世代バイオマス樹脂として期待される。販売は三井物産が行う予定だが、Avantium社(オランダ)は、1月、樹脂開発、供給元であったSynvina社(BASF社との合弁によって設立)の単独所有を発表、また11月、日本の高付加価値用途強化に向けて日本法人の設立を発表した。
https://www.avantium.com/press-releases/avantium-opens-branch-office-in-japan-to-reinforce-high-value-market-for-pef/
NEDOのCCUSの取り組み (気候変動・災害対策Biz 2019、上図は展示会配布資料より)
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は環境関連技術について、その事業内容や成果等を紹介した。その中、石炭火力は、化石燃料の中でも最も多くCO2を排出し、世界的には脱石炭火力が進むが、日本においては重要な電源として位置づけられ、その運用にはCO2排出量の削減が求められる。CO2排出削減には、CO2の分離・回収、有効利用及び貯留(CCUS:Carbon Capture, Utilization and Storage)が重要となっており、2016年6月に協議会で制定された「次世代火力にかかるロードマップ」に基づいて様々なCCUS技術の開発に取り組んでいる。 「現在はCO2 を吸収液に化学反応を利用して吸収・分離する化学吸収法がベースとなっていますが、まだまだ導入コストが高く、普及に向けて低コストが実現できる手法の開発に取り組んでいます。火力発電関係だけでなく、佐賀市では藻類の培養に使われている事例もあり、将来的に回収したCO2によって製造された製品などには、そのことがわかる表示をつけるなどの考えもあります」(環境部クリーンコールグループ担当)