研究情報

東大・JAMSTEC・群大研究G、深海でも分解が進む酵素内包生分解性プラスチック開発成功。NEDO事業において(2026.10)

 2026年10月22日、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進するムーンショット型研究開発事業「生分解開始スイッチ機能を有する海洋分解性プラスチックの研究開発」において、国立大学法人東京大学、国立研究開発法人海洋研究開発機構、国立大学法人群馬大学は、深海をはじめとする分解微生物が極めて少ない海洋環境下でも、生分解が大幅に速く進む「酵素内包生分解性プラスチック」の開発に成功したと発表した。

 開発した酵素内包の技術は、酵素を添加しても元の生分解性プラスチックと同等の強度を維持し、さまざまな製品に熱成形加工することも可能な革新的なアプローチである。さらに、使用中は分解せず、環境中に流れ出たときに摩耗や断片化により生分解が誘発される「生分解開始スイッチ機能」も有している。また、深海環境下でも速やかに分解が進むため、マイクロプラスチック汚染問題の低減にも貢献する。

酵素内包生分解性プラスチックと深海分解

<背景>

 現在、毎年約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出している可能性があると報告されている(Science 347, 768 (2015))。そのほとんどは、山、川、湖、海のいずれの環境でも300年以上も分解しないプラスチックとされている。このような背景の中、現在、あらゆる自然環境下で微生物の働きにより二酸化炭素と水にまで完全に分解される「生分解性プラスチック」の開発が望まれている。

 これまでに本事業の成果の一つとして、さまざまな生分解性プラスチックが水深757m~5552mの深海底で、微生物により生分解されることを世界で初めて明らかにした(Nature Communications, 15, Article Number 568 (2024))。しかしながら、一部の生分解性プラスチックは、深海での生分解速度が非常に遅く、完全に分解するには速いものでも数年はかかることが同時に明らかになった。

 本事業では、生分解性プラスチック内に自然由来の分解酵素を埋め込むことにより、分解微生物の存在が乏しい深海を含む極限環境下でも速やかに生分解する「酵素内包生分解性プラスチック」の開発を目指した。

<今回の成果>

(1)酵素内包生分解性プラスチックの開発による分解速度の向上
 本事業では、生分解性プラスチックに自然由来の分解酵素(クチナーゼやリパーゼなど)を、それぞれのプラスチックの熱軟化点以上で熱混練することにより作製し、酵素を添加しても、元のプラスチックと同等の強度や柔軟性を維持するとともに、水温が低く、水圧も高い深海へと沈降・拡散した場合でも酵素活性を保持し、生分解速度が大幅に速まる「酵素内包生分解性プラスチック」の開発に成功した。

 具体的には、酵素内包の技術により、岸壁に加え、深海でも速やかに分解が進行し、岸壁では1カ月以内に、水深757m付近の深海でも5カ月以内に完全に分解させることに成功した。酵素内包生分解性プラスチックの分解速度は、酵素を内包していない場合と比べて、約30倍の速さであった。本結果は、低温(4℃)かつ高水圧(7.6MPa、大気圧の約75倍)という深海の極限環境下でも、プラスチック内に包埋された酵素が変性・失活することなく分解活性を維持し、基質であるプラスチックの分解を進行させ得ることを実証するものであり、深海環境下での生分解性に関する重要な知見となる。

詳しくは、→https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101963.html

2026-10-27 | Posted in 研究情報 |