研究情報
TOWING、タイにて高機能バイオ炭を活用した農業実証を本格展開。タイの大手企業との連携(2025.6)
名古屋大学発スタートアップ・高機能バイオ炭開発の㈱TOWING(名古屋市)は、タイ王国において、同国や日本国内の大手企業と連携し、地域の未利用バイオマスの炭化物にTOWINGが保有する土壌由来の微生物群を効率的に選別・培養する技術を用いて実現した土壌改良資材である高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」を活用した農業実証を5カ所で開始した。さらに、追加で5カ所以上の実証プロジェクトを計画している。
タイ王国では、砂質土壌における土壌劣化が課題となっている地域が存在する。また、砂糖やキャッサバなどの農産物加工企業を中心とした独自の農業サプライチェーンが確立されており、農業残渣の有効活用や環境負荷低減への関心が高まっている。さらに、野焼きなどにより発生するPM2.5などの大気汚染問題解決の一環として、農業残渣を原料とするバイオ炭の活用にも期待が寄せられている。TOWINGは、これらの背景からタイ王国を重要な市場と捉え、同国の持続可能な農業発展と環境問題解決に貢献することを目指している。
< 実証プロジェクトの概要>
本実証では、大規模栽培を行うトウモロコシ、サトウキビ、キャッサバの他、チンゲン菜やダイコンなどの園芸野菜を対象作物とし、宙炭による土壌改良、化学肥料の使用量削減、収量向上、そして農地への炭素貯留効果を検証するため、各大手企業や、既にMoUを締結しているカセサート大学カンペンセーン校と連携しながらタイ中部・東部・北部にて同時に実証を行っている。
使用するバイオ炭は、連携先であるタイ大手財閥(SCG: Siam Cement Group)傘下のSCG Cementより調達した原料を元に、TOWINGの技術で付加価値を高めた高機能バイオ炭を生産・利用する。
実証連携先の一つである食品加工大手Lampang Foods社(タイ北部)とは、同社が契約栽培を行う10,000ライ(約1,600ヘクタール)のトウモロコシ(スイートコーン)を対象としたスキームの構築を進めている。本スキームでは、宙炭の施用により農地への炭素貯留を推進するとともに、有機肥料の利用を最大化することで土壌の健全性を高め、地域農業全体の持続可能性向上に貢献することを目指す。同様の取り組みを、砂糖、キャッサバなどを取り扱う他の大手企業とも連携して推進中である。
<今後の展望>
TOWINGは、経済産業省の「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」にも採択されており、タイにおける宙炭の生産・利用モデルの大規模化にも着手している。タイ王国でのさらなる事業拡大のため、Spiber (Thailand) Ltd.の元Directorである浅井 俊雅氏を責任者として迎え、2025年7月を目途に駐在員事務所を設置予定である。

カセサート大学カンペンセーン校(タイ・ナコンパトム県)における圃場試験の一部