研究情報
東大研究G、非貴金属固体触媒で芳香族化合物と水素の同時合成を実現。酸化剤や添加剤不要(2025.2)
東京大学の研究グループは、世界で初めて非貴金属固体触媒のみを用いて、シクロヘキサノン等の脂肪族化合物から有用な芳香族化合物とエネルギー源となる水素の同時合成に成功したと発表した。
本研究では、これまでのニッケル錯体触媒におけるボトルネックを解消するため、一般的に有機反応開発で用いられる均一系金属錯体触媒とは異なる、不均一系担持金属ナノ粒子触媒特有の協奏的触媒作用に着目し、酸化セリウム担持ニッケルナノ粒子触媒を開発した。これにより、酸化剤を用いずに、シクロヘキサノン等の脂肪族化合物を基質としたさまざまな芳香族化合物への脱水素芳香環形成反応をニッケル触媒で初めて達成した。
芳香族化合物は医薬品、農薬、液晶、染料、ポリマー等身の回りに遍在し、人類社会を支える重要な化合物群。芳香族化合物の合成手法としては、他の芳香族化合物を基質とした分子変換反応が一般的だが、芳香族化合物が基質であることに由来して、有害な試薬の使用や多段階の合成ステップ等が必要となることが多く、環境負荷の問題が生じる場合がある。そこで、近年では、シクロヘキサノン類をはじめとする脂肪族化合物を基質とした脱水素芳香環形成反応が芳香族化合物を合成する環境にやさしい新手法として注目されている。より環境調和的な脱水素芳香環形成反応の開発の観点からは、酸化剤を用いずに、エネルギー源にもなる水素分子を同時に製造して有害な廃棄物を出さないアクセプターレス(反応において基質から電子を受け取る物質を必要としない)脱水素芳香環形成反応が特に重要である。しかし、これまでにそのような報告例は少なく、高価で稀少なパラジウム等の貴金属触媒が必要であることが課題だった。
本研究では、パラジウムの同族元素であり、安価で豊富に存在する非貴金属のニッケルに着目した。
詳しくは、→https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2025-02-10-001