ニュース情報／政策関連
米国農務省レポート／米国のRenewable Diesel生産の増加は世界の原料貿易に大きな影響（2024.6）
米国・農務省は、2024年6月11日付けで、国際農産物貿易レポートを発行、米国のRenewable Diesel（RD、再生可能ディーゼル）生産の増加は世界の原料貿易に劇的な影響を与えるとした。
過去数年間、米国のRenewable Diesel（RD）生産の状況は、過去20年間のエタノールとバイオディーゼルの成長と同様に、劇的に変化した。排出量削減を目的とした連邦および州の政策に後押しされ、米国のRD生産と生産能力の劇的な成長は、国内および海外の原料取引の両方で、市場を大きく変える変化を引き起こしている。RDは、バイオディーゼルと同様に、植物油、動物性脂肪、または廃食用油（UCO）などの同じ再生可能原料から生産される。違いは、RDは水素処理を行って生産されるため、化学的に石油ディーゼルと同等になり、より高いレベルで混合でき、既存のパイプラインを使用して輸送できることである。
その結果、米国は、RD生産の原料として使用するため、また、RD生産に転用された大豆油などの他の原料を補充するために、動物性脂肪と植物油の輸入を急速に拡大している。国内では、大豆油価格の高騰により圧搾マージンが高まり、米国の大豆圧搾が拡大して油の生産量が増加した。国内需要が増加する一方で、ブラジルの供給拡大と世界的な輸入需要の伸び鈍化により、米国の大豆輸出は減少した。さらに、米国の大豆油プレミアムが世界の植物油価格をはるかに上回ったため、米国の輸出は急落し、米国は2023年に初めて大豆油の純輸入国となった。大豆圧搾の増加は、ミール輸出にとって逆の効果をもたらしており、大豆ミールの豊富さと、世界最大の大豆ミール輸出国であるアルゼンチンの干ばつが相まって、輸出を押し上げており、継続的な成長の可能性がある。米国のバイオ燃料、動物性脂肪、油糧種子市場には多くの不確定要素が影響する可能性があるが、RD生産は今後も成長を続け、原料市場に変化をもたらすと予想される。ただし、生産成長率は、連邦および州の政策、原料の入手可能性、および米国の大豆ミール輸出の持続的な増加に大きく左右される。
過去数年間のRD生産の急激な拡大は政策によるものである。RDの需要は、石油ディーゼルに比べて炭素排出量が削減されることで推進されており、バイオディーゼルとは異なり、低レベルでの混合に限定されるのではなく、石油ディーゼルの代替品として使用できる。石油ディーゼルとRDは同じではないが、非常に似ていて代替可能であるため、エネルギー調整価格で競合する（石油ディーゼルのエネルギー含有量はわずかに高くなる）。ただし、RDの生産コストは大幅に高いため、石油ディーゼルよりもかなり高額になる。したがって、最低量を義務付け、税額控除を提供する連邦および州の炭素削減政策がなければ、RD生産の市場は存在しないだろう。
連邦政府の観点から見ると、RDとバイオディーゼルの両方を含むバイオマスベースのディーゼルの生産を奨励する主な政策が 2 つあります。1つ目はブレンダー税額控除で、これはバイオマスベースのディーゼルを米国のディーゼル プールにブレンドするための税控除を提供する。これにより、バイオマスベースのディーゼルの生産コストの高さが部分的に相殺され、石油ディーゼルに対するプレミアムが縮小される。2 つ目の連邦政策は再生可能燃料基準 （RFS） である。この政策は、バイオマスベースのディーゼル、SAF、エタノールなどのバイオ燃料を米国の燃料プール全体にブレンドする必要がある義務的な最低基準を設定する。
これらの連邦法はバイオ燃料の成長を奨励しているが、RDの拡大の本当の原動力は、カリフォルニア低炭素燃料基準（LCFS）である。ブレンダーズクレジットと同様に、この政策は、排出目標を達成するための炭素クレジットを通じてバイオマスベースのディーゼル生産コストの上昇を相殺し、カリフォルニアでのRDの消費を促進してきた。カリフォルニアでは、エタノール（ガソリンプールの10％）とバイオディーゼル（ディーゼルプールの5％）の両方のブレンド上限にすでに達していたため、ブレンダーは、RDのブレンドを増やす、SAFを使用する、または既存のバイオ燃料の消費と生産およびブレンドによる炭素排出量を削減するなど、他の炭素排出量削減代替手段を活用する必要があった。その結果、RDは、バイオディーゼルやエタノールのようにブレンド上限がないため、また、LCFSによって生み出されたバイオ燃料の長期的な需要安定性に刺激されて、生産能力を増強するための民間投資が流入したため、拡大したのである。