研究情報
ユアサ木材、リグニン含むCNF配合の塗料性能の研究開始。低環境負荷の木部用塗料商品化へ(2024.3)
ユアサ木材㈱は、森林整備事業で派生する間伐材や未利用材の高付加価値化を目指し、この度、北海道立総合研究機構 林産試験場と共同で、自社林に植栽されている樹種を含めた北海道産の針葉樹・広葉樹の内、数種類をLCNF (リグノセルロースナノファイバー)化し、まずはじめに塗料添加剤としての利用可能性の研究を開始した。
同社は北海道道東地域に約100haの社有林を保有・管理し、森林整備事業で派生する間伐材や林地残材などの有効活用と高付加価値化を模索していた。そこで自社林がある鶴居村や標茶町は酪農が盛んな地域で、おが粉などの木粉製造も昔から行われていることからLCNF製造過程の木粉化も容易と考えた。また、地球温暖化による紫外線の影響が木造建築物の耐用年数に大きな影響を与えると想定し、その防止策としてリグニンを含んだCNFを添加した塗料等の需要が近い将来高まると考え今回の研究に至る。
<研究概要>
木材などの植物繊維の主成分であるセルロースをナノレベルまで解繊したCNFは再生可能性、高強度、低熱膨張率、ガスバリアなどの特徴を有することから、脱化石資源化を図る素材として大きな期待が寄せられている。
一般に、CNFを製造する際には、植物原料から蒸解等でリグニンを除去して得たパルプを原料とするが、これとは別に、木粉等を脱リグニンせず直接解繊(LCNF化)する方法もある。この方法は脱リグニンに要する設備や薬剤、エネルギーコスト等を省略でき、より環境負荷が低い。また、含まれるリグニンの特徴として疎水性が高いこと、高い紫外線吸収性が期待できることから、今回、共同研究としてLCNFを採用し、塗料に添付した際の粘度変化や塗膜の耐候性を評価した。樹種により粘度に差があったが、数%の添付で高いチキソトロピー性が現れ液だれ防止効果が期待された。また、促進耐候性試験(約1,500時間)と屋外暴露試験により、高い耐候性は確認できなかったが、変色抑制効果が認められた。今後は、添付割合を増やすことで更なる効果を期待する。
詳しくは、→https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000107803.html