研究情報

NEDOと日清紡HD、イオン結合有する海洋生分解性プラ素材開発。生分解促進の添加剤利用へ(2023.9)

 NEDOの「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業」で日清紡ホールディングス㈱は、海水中で速やかに無害な成分に変換される生分解性プラスチック素材の開発に取り組んでいる。そして今般、プラスチック素材を構成する分子の骨格部分(主鎖)にイオン結合を導入することで、結合部分が海水中のナトリウムイオンと置き換わり低分子化され、生分解が促進される新たなプラスチック素材を開発したと発表した。

イオン結合を有する海洋生分解性プラスチック素材の生分解機構のイメージ

 本開発材は他のプラスチックと溶融混練しやすいため、プラスチックの物理的性質を大きく損なわずに生分解を促進する樹脂添加剤として使用できる。また、本開発材は、海域や海水温度などによらず、セルロースを超える高い生分解度を示すとともに、土壌中でも生分解性を有することが確認されており、幅広い環境で生分解するマルチ生分解性が期待される。
 今後、日清紡ホールディングス㈱は、本開発材を樹脂添加剤として早期に製品化することを目指し、プラスチック・素材・成形メーカーとのマッチングと量産体制の構築を進める考えだ。

 NEDOは、2020年度から「海洋生分解性プラスチックに関する新技術・新素材の開発」を実施している。その一環として、海水中に豊富に存在するナトリウムイオンによる生分解のトリガーに注目し、日清紡ホールディングス㈱と共同で、イオン結合を有する海洋生分解性プラスチック素材の開発に取り組んでいる。中でも、プラスチック素材を構成する分子にイオン結合を導入したものは、海水中でイオン交換が生じ、低分子量化することで生分解の開始点を増やし、生分解の促進を図れる新たな技術として注目されている。
 日清紡ホールディングスは2021年に、海洋汚染の原因の一つであるプラスチックビーズの代替素材として、バイオマスであるアルギン酸を利用した「フラビカファインSILKYタイプ」を開発し、化粧品や皮膚洗浄剤などのパーソナルケア製品を主な用途として製品化を進めている。今回、新たに樹脂添加剤への用途拡大を目指し、他のプラスチックと溶融混錬が可能なイオン結合を有する海洋生分解性プラスチックの開発を進めてきた。
 本開発材は、樹脂添加剤に適するよう、独自の技術で主鎖にイオン結合を取り込み、構造と組成を改良した。これにより、他のプラスチックと溶融混練しやすくなり、プラスチックの物理的性質を大きく損なわずに生分解を促進する樹脂添加剤としての使用に成功した。

詳しくは、→https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101690.html

2023-09-30 | Posted in 研究情報 |