研究情報
京大・京都工繊大の研究G、植物の主成分リグニンに結合する合成ポリマーを開発。植物バイオマスの分解や分離への応用へ(2025.2)
京都大学、京都工芸繊維大学の研究グループは、木材から分離した天然のリグニンに結合する合成ポリマーを開発したと発表した。リグニンに結合する合成ポリマーを探索するにあたり、短時間(96 サンプルを 6 秒)で簡単に試験が可能なスクリーニング方法を開発した。本法によって選別されたリグニンに結合するポリマーを詳細に解析した結果、リグニンに対する高い結合性能を有することを確認した。本研究成果は John Wiley & Sons 社が出版する Macromolecular Rapid Communications 誌とイギリス化学会が出版する RSC Sustainability 誌に掲載され、両論文共にそれぞれ 2025 年2月20日と2025年2月5日付けで発行された掲載号の表紙絵(カバーピクチャー)に採用された。
サステイナブルな循環型社会の構築において植物バイオマスの利用は極めて有効な手段のひとつであり、2030 年を目標とする温室効果ガス排出削減目標の達成、2050 年のカーボンニュートラルの達成に向けて、地球全体でその対策に取り組んでいる。植物の細胞壁は主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成されており、それぞれの特徴に応じた有効利用法の開発が進められている。セルロースなど多糖類の有効利用が急速に進む一方、リグニンにおいては有効利用が開発途上である上に、リグニンの効率的な分解にも課題が山積している。化成品やバイオ燃料を石油などの化石資源に替わって再生可能な植物バイオマス資源からつくるためには、植物細胞壁を固めるリグニンを高効率で分解することが鍵となる。難分解性のリグニンの分解においては、酵素や人工触媒のリグニンへの結合がリグニンを効率的に分解するための重要な要素となるが、酵素や人工触媒に導入可能なリグニンに結合する分子の報告は多くはない。リグニンに結合する分子を新たに開発し、その分子をリグニン分解酵素や人工触媒に組み込むことができれば、効率よくリグニンを分解できるようになると予測でき、植物バイオマス資源の有用物質への変換の大きな武器となる。また、リグニンに結合する分子は、植物バイオマスからリグニンを分離・精製することにも応用が期待できる。
詳しくは、→https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2025-02-25-0