研究情報
NEDOとKAISO BANK、全国5漁港でブルーカーボン増大の起点となる核藻場の造成に成功。藻場造成事業モデル構築に向けて(2026.9)
2026年9月29日、NEDOとKAISO BANKは、全国5漁港の周辺海域で核藻場の造成に成功したと発表した。これは、「グリーンイノベーション基金事業/漁港を利活用した海藻バンクによるブルーカーボン生態系拡大プロジェクト」の成果であり、気候変動の影響により海藻の生育が困難となる「磯焼け」が全国的に深刻化する中、その再生の起点となる核藻場を造成することで、藻場の再生によるブルーカーボンの増大を通じ、カーボンニュートラルの実現に貢献するものである。
KAISO BANKは、気候変動による藻場減少の課題解決に向け、「つくる(種苗生産)」「育てる(中間育成)」「増やす(基盤ブロック・移植)」「測る(広域藻場モニタリング)」という藻場造成に関わる各工程の技術を一体的に開発している。結果、2024年度から2025年度にかけて、異なる環境条件の5漁港周辺の海域に設置した基盤ブロックに海藻カートリッジ(海藻種苗)を移植してから約1年で、それぞれが核藻場へと成長しした。これにより、一気通貫の事業モデル、および基礎技術の有効性が示され、全国展開に向けた展望が得られた。
今後は、藻場造成技術の高度化と藻場の大規模化を進めるとともに、技術の全国展開を行い、2030年度までに70haの藻場を造成することで、年間399t以上のCO2吸収・貯留を目指す。

左:長崎県対馬市豊漁港における磯焼け状況、中:基盤ブロックへの海藻カートリッジの移植、右:今回造成した豊漁港の核藻場(アカモク)
<背景>
日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」の達成には、CO2排出削減に加え、排出が避けられないCO2を相殺する手段として、大気中のCO2除去(CDR:Carbon Dioxide Removal)の活用が不可欠である。
ブルーカーボンはその代表的な選択肢の一つであり、沿岸・海洋生態系が光合成によって取り込んだCO2のうち、海底や深海に長期貯留される炭素を指す。そのCO2吸収・貯留機能を維持・拡大するためには、主要なブルーカーボン生態系である藻場を適切に保全・回復することが重要である。
しかし近年は、地球温暖化に伴う海水温上昇や食害生物の活発化などにより、海の砂漠化とも呼ばれる「磯焼け」が全国的に深刻化している。従来の技術では、種苗の安定的な確保や地域ごとに異なる藻場衰退要因への適切な対応が課題であり、藻場の保全・回復を十分に進めることが困難な状況にある。加えて、CO2吸収・貯留量を定量化するためのモニタリング技術は、人手を要する潜水調査の省力化が求められている。これらの技術は海域ごとに異なる環境条件に応じて適切に組み合わせる必要がある一方、従来は藻場造成に関わる各工程が分断されており、効率的な事業展開が難しいという課題があった。
そこでNEDOの「グリーンイノベーション基金事業」では、各工程の専門企業がコンソーシアム「KAISO BANK」を組織し、それぞれの強みを活かし、「つくる(種苗生産)」「育てる(中間育成)」「増やす(基盤ブロック・移植)」「測る(広域藻場モニタリング)」の技術的課題の解決を目指し、全国5漁港を拠点に、気候変動に適応した種苗の安定生産技術、衰退要因に応じた藻場造成技術、およびドローンなどを活用した効率的なモニタリング技術を一体的に開発している。さらに、環境条件の異なる5漁港周辺の海域で実証を行うことで、多様な海域環境に適用可能な一気通貫の事業モデルを構築し、全国展開を目指している。
<今回の成果>
2022年度から開始した本プロジェクト※2は、藻場造成の適地選定から、「つくる」「育てる」「増やす」「測る」までの一連の取り組みを、ワンストップで提供できる体制を全国5漁港で構築し、基礎技術の開発に取り組んできた。そして、2024年度から2025年度にかけて各漁港周辺の海域に設置した基盤ブロックに海藻カートリッジ(海藻種苗)を移植してから約1年で、それぞれが核藻場へと成長した。
環境条件や藻場の衰退要因が異なる5漁港での今回の実証を通じて、海域ごとの特性に応じて適地を選定し、各技術を組み合わせることで藻場を造成できることを確認した。これにより、一気通貫の事業モデルおよび基礎技術の有効性が示され、全国の自治体や漁業関係者、ブルーカーボン創出に関心を持つ企業に対して提案・導入を進めるための素地が整った。
詳しくは、→https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101966.html
関連情報→https://greenproduction.co.jp/archives/27445
